サルトでは現在、ご予約なしのご来店や直近のご予約ではご案内が出来ない場合が多くございます。できる限り、事前のご予約をお願いいたします。

SARTO

  • サルト_instagram
  • サルト_facebook

column

20世紀の傑作コート10選 完全版 4〜グレートコートについて 〜


>>>>>>>>>>>>>>>>前回より




サルト

CPGで有名なヴィンセントさん(当時のT&Cチーフエディターでもありましたよ)の別の書籍、"ヴィンセントシステム"からです。
ヴィンセントさんは数々の名著を残しております。もっとも有名なのが、先ほどから言っているCPGシリーズ。(たしか、1890年頃からはじまったこのシリーズは知っている限りではパート15くらいまで続くはずです。)。そして1903年のヴィンセントシステム。これを改変し1908年にTailor & Cutter Academy Systemになります。CPGシリーズはきっとこの中で一番言葉の情報量が多くもっとも"読み物"然としたもので、ヴィンセントシリーズはダイアグラムと製図がたくさん載っているモノです。T&Cシステムはヴィンセントシステムの一つ一つの説明がちょっと多く丁寧な印象を受けます。
手元のPKTCPG7版は年代も190x年後半のモノだと思います。内容的には非常にヴィンセントシステムと近いモノですね。(ですので、今回はVincent Systemから)
ちなみにヴィンセントシステムはパート5(Breast Measure systemをあわせて6までとするという説もあり。)まであります。1903年のコンプリートエディションが現物で手元にありますから、これも今後詳しくご紹介いたします。(昔のこういった本はPart売りと全パートが合わさったコンプリートエディションというものがありました。CPGのコンプリートは未だに見たことありません。見つけ次第ここで自慢いたします。)

このヴィンセントシステムには"グレートコート"は載っていないのですが、ミリタリーオーヴァーコートが載っております。
非常に凝った作りですよね。
ランサー型ダブルブレストにラグランスリーブ。ポケットは俗に言う貫通タイプのモノですが、ざっくりとパッチポケットを内側に作ってしまうやつですね。
スリット+インパッチという感じです。
このタイプのポケットのついたオーヴァーを一度だけ見たことがあります。
表側にパッチポケットのスティッチとアタリが完全に出てきますから、その哀愁が何ともいえませんでしたけど、まぁ、流行らなかったのでしょうね〜。今見ないことを鑑みれば。

ドットラインで描かれてあるセンターフロントのラインは何だかわかりますか?

よく見れば " For マウンテッド・オフィサー" っとなっていますよね。これは馬にまたがるオフィサー用のフロントラインです。

CPG (British Military、Partは13になるのかな?)の方にマウンテッド・オフィサーのイラストがありましたから。確認いたしましょう

サルト

上のダイアグラムのドットラインで作ると、このイラストの左のようになります。
ヴィンセントさんはどちらかというと"グレートコート"という名称をこのタイプのコートには使わなかったようです。

サルト

たとえば、これも同様のCPGからですがこのタイプはWW2期のWhifeさん設計のグレートコートに似ていますよね。

たとえば、CPGでヴィンセントさんが"グレートコート"と呼ぶモノにはこういったものがあります。

サルト

サルト

ゴージャスですよね。こんなモノ今作ったらとんでもないですよ。
Dominion of Canada とはイギリス自治領カナダということです。
British Military パートのCPGにかかれているわけですから、無論当時はブリティッシュですよね。
すごいですね、"耳が隠れるほどのスタンド&フォールカラー" (と描写されております)にはアストラカンファーがつけられてますよ。
フロントの仕様は"Frogging"と呼ばれますが、この本では"ループス"としか書かれてありませんね。真ん中の意匠は"Eye"と呼ばれているようです。
まぁ、高価な意匠ですよ。
気になる人は贔屓にしているテーラーで作ってみてください。ライニングはもうロシアンセーブルとかにしちゃえば良いんですよ。
このコート着ながら、カナダグースのエクスペディションパーカ着ている人に、"東京でエクスペディションって、オーバースペックだっつーの!!" って突っ込んでやれば良いんですよ。
"そんなあなただって、自治領カナダ時代のグレートコート着てるじゃないですかぁ〜!ポイントポイントでアストラカンファー使って、ライニングにいたってはセーブルじゃないっすか〜!しかもポケットバッグにディアスキンまでつかって、いったい何種類の動物使ってるンだっつーの!こちとらグーズだけだっつーの!"
って返してきたら一人前ですよね。

"そうだねぇ〜ファブリック自体はウールだから、羊で、このループはシルクだから、最低5種類の動物は使っているかな〜シルクワームはほとんど人工みたいな物だけど、一応動物という範疇で考えてますよ。"

なんて会話を暖房の効いた電車の中で聞きたいものですよ。
ヴィキューナのオーヴァーコート着ながら聞きたいですよ。


あと、ほんの少し脱線しますと、こんなモノもあります。

サルト

モーターオーヴァーコート。
グレートコートと非常に似ていますよね。違いといえば、カフでしょうね。
読めますかね?
Turn Back Cuff とWind Cuffと書かれてあります。これはターンバックカフの内側がリブのような作りになっているんですね。
今であれば比較的どんな既製服でも簡単にお目見えするのですが、ヴィクトリアン期のハンドメードガーメントでこれを作るの少々骨が折れますよ。(きっとラバーを噛ませてギャザリングして作っていたのでしょうが、現物を見たことありませんから、どうだったのでしょうかね?
"エラスティックで手首を閉める"としかかかれていません汗)

サルト

アーミー最後のモノは一番特殊なやつにいたしましょうか。

これは1893年のThorntonさんのSectional System。泣く子も黙る名著中の名著です。Thorntonさんのもので、もう一つSectionalと双璧をなす1907年のInternational Systemというのがあるのですが、そちらにはミリタリーガーメントは載っていません。その販路を海外にまで広げたため、ミリタリーガーメントを載せる必要性がなかったのですよね。
ですので、セクショナルからだけで失礼いたします。

この右下に書かれてあるDia7、これはGreatcoat with Cape。袖無しです。上に書かれてあるケープがつきます。
これはStaff, Infantry, Engineers用と書かれてありますから、幅広く使われていたように思います。まぁ、正直現物を拝んだことはありません。

要はクローク(Cloak)なのですが、一応Dia5に書かれてあるのがクロークとなっていまして、一応呼び分けているようです。まぁほとんど同じようなモノです。
説明文でもDia7とほとんど一緒だ、と書かれてありますが若干ゆとりのあるデザインをしています。そのために名前を変えているのでしょうね。
Dia7の方がユニフォーム然としていて、より堅さが見て取れますよね。"グレートコート"にはそういった格や品があると言いましょうか、上のヴィンセントさんのミリタリーオーヴァーコートも彼から見たら、まだまだフォーマル感が足りないものだから、そう呼ぶのを嫌ったのかもしれません。CPGでのカナディアン・グレートコートを見れば一つや、二つほど、彼のオーヴァーコートとより格が上がっているのがわかりますし、彼にとって"グレートコート"はこのレベルのものですよっと言っているような印象も受けますよね。

まぁ、このように簡単に一言で"グレートコート"と呼びましても、たくさんあるんですよ。
もちろんこれだけではないですし、始めに言ったとおり、これはまだアーミーのお話ですから、NavyとRAFがまだ残っているという事実なのですよね。

なので、もう疲れたという皆様にお知らせですが、グレートコート件は俄然続きます。