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SARTO

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column

今回紹介するピースはオーセンティックやスタンダード、という言葉からはほんの少しずれるオーヴァーコートなのですが、非常にクラシカルでウェルメイドな特別なコートです。

ちょっとタグを見ても年代が上手いこと特定できませんのですが、作りやディテールを見れば確実に100年以上前に仕立てたれたアンティークガーメントだと分かります。
しかし古いカッティングですが袖を通してみれば不思議とヴィクトリアンやエドワーディアンのコスチューム感を感じさせないスマートなシルエット。
何とも不思議な一着です。
多分このような一着は皆様も今までに見たこと無いと思いますし、今後も目にする機会は無いと断言致しましょう。

お世話になっております、をさないです。

アンティークガーメントに袖を通すことはおろか、目にする機会も基本は少ないと思います。
探したところでそんなに簡単には見つからない。日本だと、先ず見つかったところで簡単に手が出る金額ではないでしょう。
私もジャケット、トラウザーズ、ヴェスト(敢えてヴェストと呼んでおきましょうか?)、コートなど、アンティーク物は数着ずつくらいしかコレクションできておりません。目を光らせていたところでこの位しか集まらないんですね。

今回はその中でも特別な物です。今後もアンティークは小出しにしていきたいと思いますので、お楽しみください。


サルト_サックオーヴァーコート

意外と普通に見えますか?
洋服を作っている人に言わせれば、"なんだこれ?" と思うほどなのですよ。

非常に特徴的ですよね。
アンティークのコートと言えば、非常にコンパクトなVゾーン。
そして、アンティーク物ではフロックコートに見られるようなラペルに切り返しが入ってある物も多いのですが、これはオーヴァーコートには珍しいシルクラペル。
要は、ディナーっぽい夜の雰囲気、言い換えればフォーマルな空気感が感じられるのですが、見ても分かるとおりラペルが小さいため、そこまで厳かな雰囲気も感じさせない、スマートさがあります。

後は状態もすばらしい。100年以上たっていますが、ほぼブランニューというような状態です。

サルト_サックオーヴァーコート

ボタンも特徴的なシルクのプレーンボタン。アンティークのシルクカヴァードボタンはブレイディドであったり、ディテール入りの物が多いのですが、これはオーヴァーコート用の大きめなサイズのプレーン。非常に綺麗です。
このボタンだけでもあまり見かけない物です。オーヴァーコートにシルクボタンを使う事が稀であるためです。

サルト_サックオーヴァーコート

サルト_サックオーヴァーコート

さて、続いてはポケットです。
このSRCでは口を酸っぱく"ポケットを見れ!"っと言ってきました。皆様もポケットの観察眼は養われてきましたでしょうか?
このSRCだけでも沢山のポケットを紹介してきていますからね。
今回はまた今までに見てきていない物です。

別にポケットで洋服のクオリティーどうこうを語ろうというのでは無く時代感や作り手の個性が分かりやすかったりしますよ〜という事でしたね。

これは片揉玉、シングルナロージェティッドっとでも言いましょうか? そして、上部のトップスティッチはハンドスティッチです。
この仕様は非常に稀です。私も見たことありませんでした。
古いコートではジャケット含めシングルジェットは主流なのですが、フィニッシングのトップスティッチはミシンで仕上げるのが通例です。

ものすごく丁寧に作られているのが分かります。ピッチも細かいですよ。

サルト_サックオーヴァーコート

テーラーはJ. Wippell&Co

実はこのテーラーにこのガーメントの特殊性の秘密が隠されてあります。
もうお察しの方もいるかもしれませんね。

イギリスに1789年から続くテーラーなのですが、歴史的にミリタリーに由来したテーラーが多いイギリスにおいて、こちらはもっと学問、宗教由来のテーラーなのです。
Ede&Ravenscroftもアカデミックよりですね。
今のウェブサイトをみれば現在は完全にクレリカルコスチュームに力を入れているようですし、このアンティークコートのクライアントも聖職者の方であったようです。

もっとも、ディテールを見れば、このコートが教会のセレモニー用(仕事用)と言うよりもパーソナルなオーヴァーガーメントであったのは想像できます。

それではなぜクライアントが聖職者だったと判断できたのか?


(小休止)

それは簡単です。


敬称が"Revd" になっていたからです。これは聖職者に対するMrのようなものです。
なのでタグの名前をみれば一目瞭然というわけです。
そのほか、イギリスではMr意外にSirが入ってある場合もありますし、名前の後にEsqと入れるテーラーも見られます。稀にDrもありますね。
一度だけ、H.R.Hを見たこともあります。無論手に入りませんでしたけども。
当時のプリンス・マイケルがどこで作っていたのかは分かったというだけの収穫はありました。ちなみにきっと皆様は知らないであろうテーラーでした。

サルト_サックオーヴァーコート

スリーブはプレーン

サルト_サックオーヴァーコート

これまたオーヴァーコートでは珍しいノーヴェント。当時は"スリット"とも言いました。アンティークっぽく言えばノースリットです。
アカデミックガウンやローブなどもお得意のテーラーですから、そういった影響もあったのだと思います。

サルト_サックオーヴァーコート

サルト_サックオーヴァーコート

サルト_サックオーヴァーコート

写真では分かりづらいのですけど、シルクラペルはこぢんまりとしていますが、フェイシングサイドはほとんどシルクです。
このラペルに使われるシルクが高価なんですよ。びっくりしますよ。
切り返しが入っていますが、年代物ではこういった今では見られない切り返しがびっくりするような所に入っていたりしますから、いちいちそういったポイントで足をとめいていては先に進めなくなってしまいます。
この場合は単純に生地を増やしたかったのでしょう。

ポケットも当時の雰囲気が伝わる綺麗なポケットです。

サルト_サックオーヴァーコート

まぁ、贅沢にシルクを使っています(笑)ほんの少し外に見せるために裏にこれだけ残ってしまっていますから。

ライニングも特徴的で今は使われない物ですね。
少し粗いシルクっぽい手触りですがコットンのようなハリもあります。正確には何か分かりかねますが、安っぽい物は一切使われていないコートですから、なにか良いモノなのでしょう。ナチュラル繊維であることは間違いないと思います。

この手のストライプのスリーブライニングもアンティーク調のものです。今のガーメントでは見られません。
知っている人だと、このライニングだけで年代物だと判断できます。


サルト_サックオーヴァーコート

サルト_サックオーヴァーコート

ちょっと年代が分かりづらいですよね。
イギリスでは基本は日、月、年の順番になるはずです、(まぁ月、日、年の時もあるのですが、)オーダーナンバーもNo15では数が若すぎます。個人のオーダーナンバーかもしれません。それですと、1910年2月4日でいいのですが、断言できません。
1910年ものだとすればディテールと一致しますが、どうでしょうかね。



サルト_サックオーヴァーコート


サルト_サックオーヴァーコート

またわかりづらい写真ですがすみません。最後のディテールです。

これは実はセンターバックシームが無いんですね。完全な一枚バックパネル
フロントにダーツもありませんので、正真正銘のサックフィットオーヴァーコートWithシルクラペルといった具合です。

オーヴァーコートは基本センターベントなのですが、シームが無ければ作りようがない。
サイドベンツじゃスポーツ過ぎます。
それではノーベントで行きましょう、っといった感じでしょうか。
これでもかと言ったほどフォーマルなオーヴァーコートなのですが、サックフィットで非常にドレイピー、バランスのとれたお堅すぎない塩梅。
もちろん外着ですから、ポケットにはフラップが付いております。
ディナーのようでディナーでない、ファーマルだけれど非常に丁寧なソフトテーラーリング。

唯一無二のオーヴァーコートです。皆様が今後もこのようなコートを見ることは無いと断言致します。