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SARTO

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column

ここ最近徐々に暖かくなってきておりますね。
もうそろそろコートもライトウエイトの物に変えている人達も増えているのでは無いでしょうか?
俄然重衣料をフィーチャーしております、お世話になっております、をさないです。

今回は私が個人的にも気に入っております、こんなコートはどうでしょうか?

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DBチェスターコート。
もうこの写真を見ただけでずいぶんと雰囲気のあるコートだとおわかりいただけると思います。
ずいぶんと肩幅が狭く見えているかもしれませんが、至って普通です。実はラペルが5 ¼"(13.5cm)もあるせいです。

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こちらは既成のヴィンテージになります。だいたい30s位の物だとディーラーさんも言っていましたが、私の見立てでも同じく30s(もしかすると、もう少し古いかも?)といった所でした。
メーカーもテーラーの名前も何もないので、こういった買い物をしたことのない人であれば、"どういった所で判断しているのだろう?"と疑問に思う人もいるでしょう。
無論、炭素14で調べているわけではないので、細かいディテールはもちろん、カッティング、あとはもちろん雰囲気と言った感じでしょうか。
何か一つで判断しているわけでは無く、経験ももちろん加味されてしまいます。

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けっこう傷んでます。が、それも込みで好きなんです。
実はこの傷すら良い感じの雰囲気にしてしまうのはこの生地のなせるワザとでもいいましょうか、きっと、今はあまり目にしない生地かもしれませんね。私もこの生地で仕事をしたことはありません。

さて、それではこの生地はなんでしょうか?

(小休止)

これが、実は前回話にも出てきた、カルゼ(日本名)、正式にはKerseyとよばれるものです。

それでは今回は "テキスタイル百科事典" からカルゼ(Kersey:カージー)の所を抜粋させてもらいましょう。

~畝のはっきりした右綾の毛織物で、やや毛羽があり光沢がある。梳毛が多いが、太めの紡毛糸を密に織り、縮絨し、起毛して、軽く剪毛(毛羽を切り取る)したものも多い。綿のカルゼは杢糸と染糸を使って霜降り効果を出した物が一般。毛織物はコートやスーツ、綿タイプはユニフォームなどに。イギリスの毛織物都市Kerseyで織られたたのが名の由来とされ、欧米では<カージー>と呼ばれる。カージーという場合はメルトンやビーバー・クロスに似た毛羽の長い紡毛織物を言う場合もある。~

これはオーヴァーコート生地のカルゼでして、紡毛糸を密に織って、縮絨させた厚みのある生地です。
このタイプは裏と表で全然表情が違っていまして、裏面は逆に皆様が良く聞く"縮絨ウール"と言えば想像するようなテキスチャーになっております。
すごく暖かい生地です。
私はこのコート以外でしたら、スーツでも一着、カルゼのブルーの3ピースがありますが、無論ヴィンテージになりますね。もちろん、秋冬用のスーツです。
<カージー>はピーコートでも有名です。それはまた今度。

まぁ、今ではあまり見ないですよね、きっと。ですから、普通の生地に飽きた方がいましたら、探してみてください。
通常の綾織物よりナナメの畝が目立つので、作り手側もちょっと新鮮だと思います。

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ライニングもご丁寧に右綾になっています。よく見るとサイドシーム下方には生地が足されてありますね。こういう仕様の仕事はしたことありませんね。

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インブレストポケット。
この辺の表情は実は色々なことを教えてくれます。
まずこの揉み玉縁ポケットからはある程度の時代感が伝わります。
今のジャケットでもそれこそ昔の物をサンプリングして作ったものであれば、こういった仕様は見ることは出来ると思いますが、普通敢えてこの仕様で作るテーラーはそういないと思います。
現在のサヴィルロウではまず作りません。なので、このポケットを英語でどう言うのかカッターさんの口から聞いたこともありません。(きっと"パイピングポケット"で良いと思います。強調したいのであれば、"ナローパイプド・ポケット"とかになるでしょうか。ジェティッドというような印象ではないのかな?)
そして、この特徴的なライニングのトリミングの仕方は非常に古風なフランス顔です。無論、おフランスのコートと言うことになります。
服狂人の中には一枚目の写真でフレンチっぽいな、と分かる人も居たかもしれませんね。そんなあなたは私の予想では5%の服狂人、穏やかな心を持ちながら(明らかな草食系)激しい怒り(過度な浪費から来る自分への憤り)によって目覚めた伝説のスーパーガチヲタキモ服狂人です。(良い意味でも、そして無論、悪い意味でも。)
きっと、大きなフランスのその中のパリだけ(特にシャンゼリゼ通り、サントノーレ通りを中心に)見て、フランスのファッションを語ってしまう人には一生到達できない伝説の戦士達です。

※私は無論フランスを語れるほどではありません。あしからず。

スリーブライニングも非常に古いタイプのライニングですね。

この写真を見ただけでもまず40sではなく、新しくても30sだろうと予想できるとおもいます。

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既製品のジャケット、またはコートのゴージラインが手で処理されていれば、それはそういう古き良き時代の既製品だということです。今の時代でこの仕様であれば、ごく普通のウールで作っても数十万するコートになってしまうかもしれませんね。(無論、ファンシーなグランドタグがつけばなお良し)恐ろしい時代です。

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チケットポケットは基本レフトフェイシング

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このクロスポケットはパッと見では両玉ですが片玉です。この辺りも時代感を教えてくれます。
私の経験則からいいますと、両玉は40sくらいから増えてきますが、それ以前では逆にあまり見ない印象です。むしろ、20s、30sでは両玉を見つける方が難しいくらいです。

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このアンダーカラーの処理、こういったミシンステッチでも何となく時代感を感じることが出来ます。

あとは、袖付き(または袖のカッティング)、ショルダーシームの入り方など古ければ古いほど当時の特徴が出てきますから、その辺も調査対象にはなるのですが、少々テクニカルすぎますので、また、もっと古いガーメントを見ていく際に話せれば良いかなぁ~っと思っております。