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column

俄然Overcoatについてお送りしています、お世話になっております、をさないです。

前回でナンバリングが10に達してしまいましたので、少しばかし空気の入れ換え程度にタイトルを変えてみました。しかしながらやっていることは全然変わらないと思いますので、そう狼狽なさらずに息を整えて、今まで通り肩の力を抜いてごらんになってください。

今回はカバートコートです。写真が多めですので、どんどん行きましょう。

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繊研新聞社のファッション大辞典ではカバートコートをこう書いております。

~カバートと呼ばれる生地(日本ではカルゼともいう)でつくられたトップコートを指す。ウエストを軽く絞った感じの軽快な雰囲気のハーフコートの物が多く見られる。~

それではそのカバートはどうでしょう。

~霜降り調を特徴とした綾織あるいは朱子織の生地。本来はコットンやシルク、また合成繊維などとウールとの混紡で作られたウィップコードを指し、日本では俗にカルゼと呼ばれる生地がこれに当たる。なお、カルゼは英語のカージー(Kersey、厚手綾織物の一種)が日本語に転訛したものとされる。カバートクロスともいう。~

なるほど、日本語の辞書ではこのように表現されております。
別に今から、これを否定していくとかそういった破壊行為に勤しむわけではありませんからご安心ください。
是非これらをすんなりと受け入れてください。

現実問題と致しましては、言葉はそれが持つ定義よりも漠然と理解されている事も多く、実際は"カバートコート"もより幅広く取り扱われることもありますし、本国イギリスでもあやふやに使われております。

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このカバートクロスと言われる物は、まぁ重たい。それじゃなくてもイギリス仕立てのフルビスポークなんてものはある程度の重たさになってしまいます。
イギリスでオーダーしたことのない人であれば、ちょっと驚くほどの重さかもしれません。
それをこのカバートクロスでもって本場イギリスで仕立てたのなら、そりゃこの重さになるわけです。
ジャケットより少し長いくらいの丈ですが、2kgを軽く超えてきますからね。

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3ボタンのフライフロント。
カントリーサイドのスポーティなコートですから、軽快さと防寒性も必要となります。当時の答えがこのようなコートを生んだのでしょう。

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この小さいなフラップのポケットはもうSRCにお付き合いいただいております皆様にはおなじみでしょう。

(小休止)

アウトチケットポケットですね。"OTP"にチェックが入っていますと、我々はこのポケットを作らなくてはなりません。
日本ではチェンジポケットと呼ぶ方も多いようですが、間違っても裸の小銭をジャケットのポケットには突っ込まないでしょう。
ましてや、日本ではジャケットのポケットは使ってはいけないようですから、もうこの際単なるデザインでしかないのかもしれません。

"ポケットに物を入れたら、形が崩れるから普通は使わないから!"と友達に啓蒙して回る今話題の宗教家のような、あなたのこだわりの哲学を別に否定はしません。
しかしながら、そこまでこだわっている人にかぎってスーツに女性物のトートバッグを肩にかけ、スーパーモデルのキャットウォークさながらに腰で歩いていたりするので、その辺のちぐはぐな感じはどうでも良いのかと少々疑問には思います。
その上、アビエーターサングラスなんかをかけていてくれればツッコミを待っているのか、それともガチでお兄さんに後ろから突っ込まれたい人なのか、少々こちらも困惑してしまいます。
その恰好でロンドンのオールドコンプトンストリート辺りを歩いているのなら後者だと分かりやすいのですが、東京だときっとその辺の判断は難しいですよね。

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ブランドは"Frank Hall"というイギリスの田舎、Market Harboroughにあります。
ライディングウェアを得意としている、100年以上続くロイヤルワラントホルダーのビスポークテーラーです。
Savile Rowではホーランド&シェリーでアポイントをとれるようです。

このコートがファッション仕様というよりも本格派なカバートコートだとご理解いただけると思います。

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ここら辺の上襟の仕様は非常にスポーティですよね。

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さてさて、ここが見物の超特大ポケット。
洋服についているポケットでこれ以上に大きなポケットを私は見たことがありません。
一応 "ゲームポケット"と呼ぶのがよさげなサイズのポケットですが、ライニングは水分に弱いですから、本格的に採った、ウサギや鳥の為につけたのかは疑問が残ります。
正直なところでは、パブなどでお茶をするときに帽子、マフラー、手袋等の身にまとう物を全部突っ込むためのポケットだと私は思います。
これ、意外と必要です。
以前にオーヴァーコートにマフラー用の大きめなポケットを作ったことがあります。着ていないときに使うポケットは意外とあるんです。そして、結構便利だったりします。

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こういった本格的なカバートコートは今ではほとんど見ること無いでしょう。
いったい、いつくらいに作られた物か想像できましたか?

実は2000年とそこまで古い物では無いんですね。
まぁ、田舎で馬でも飼っていない限り一着目に作ろうとは思わないコートでしょうが、クラシックな車なんかとは相性が良いかもしれませんね。

ともかく、イギリスでは馬は非常に人気のある動物です。
イギリスの女の子は99%馬好きだとイギリス人の友達は言っていましたし、実際大学時代のクラスメイトでも、馬がいるから田舎から通っているという娘もいました。
いやはや、我々も田舎暮らしで週一ロンドンに通えば良いと言うくらい、ゆっくりとジャケットなんかを作って生活しているわけではありますけども、さすがに馬を飼うほどどっぷりなカントリーライフに没頭しているわけではございません。

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センターベントは結構深めですね。スポーティです。

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オーヴァーコートのフラップ裏はライナーでは無くウールフランネルまたはメルトンなどの厚みのある物が使われる場合が多いです。
バッグにはコットンフランネル。日本人のテーラーさんはこの前コットンベルベットを使う事もあると言っておりましたね。基本、起毛素材は体感温度が暖かいですから。