SARTO

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column

皆様は今年の冬をどのようにお過ごしでしょうか?
オーヴァーコートは何着ほどご購入されたでしょうか?
これだけ洋服に溢れている現代でございます。本当の一張羅を手に入れるのは非常に難しいように思います。
本物のスタイルのある人物になるというのは困難な道程です。星の数ほどあるような洋服の中から "もう自分にはこれしかシックリとこないなぁ〜"と言うこところまでその数を削ぎ落としていく過程に見つけられる物かもしれません。
一つの凸凹な石ころが山の上から転がり続け、次第に丸く、そして洗練されていくいくさまのように私は思います。
私の場合は仕事柄、はたまたコレクターとして洋服は確かに普通の人に比べれば途方も無いほど所有しておりますが着る服はどんどんとその範囲が狭まっているように感じます。
ある人は面白くなくなったとか、またある人は年を取ったというかもしれません。

どこかの有名な彫刻家が昔 "石の中に本来あるモノを取り出しているだけだ" と言うようなことを言っていました。
あなたがそんな石であるならば、きっとその中に貴方固有のスタイルがあるのだとおもいますし、時間とともにそれが自然とあなた自身を表現してくれるのだと思います。
スタイルの形成とは貴方が彫刻家で、あたえられた大理石を無闇に砕いて行くという作業では無いのだとおもいます。

だから何? と言われれば返す言葉も無いのですが、まぁ、私も大して意味があってこういった冒頭を書いているわけではない事はもう皆様ならお分かりだと思います。無論文字数を稼いでいるだけでございますから、どうぞ肩の力を抜いてください。

お世話になっております、をさないです。

さて、年始はどんどんとピクトリアルにいこうと決めたわけですから、サクサクいきましょう。
ですが、今回は少々味気ない写真になってしまします。
まぁ、勉強にはなりますから、見ていってください。

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1928年のTailor and Cutter マガジンからの抜粋です。今度こういった本についてはまた詳しくやろうと思っています。
このT&Cは週刊でして私は1928年の年間に発行されたものが一冊にまとまったモノを所有しております。1000ページ位あります。
メンズファッションマガジンの最高権威と言っても過言ではないでしょう。テイラーの学校も持っていました。
かのThe Modern Tailor Outfitter and Clothier(通称MTOC)、私がずっとメンズファッションのバイブルと言っているわけですけども、この編集に携わっている人たちも無論T&Cの相互協力の元編集しております。

"それではT&Cのほうがバイブルっぽくないですか?"という質問も無論あることでしょう。
いやいや、そうなのですが、T&Cはあくまで週刊マガジンだったわけでして、広告も多く、ガッツリと編集されたMTOCの方がやっぱり完成度は高いと私は思います。
T&Cはきっと100年位続いていたマガジンですからね。そもそも、容量が膨大すぎます。(正確にいつ創刊されたのか、調べてもでてこないので、今度しっかり調べておきます。ちなみに、1928年の1月5日号でNo3194ですから、逆算すれば、1867年?)
もう少し付け加えてしまいますと、Cutter's Practical Guide(CPG)という本が旧約聖書的な位置づけになります。(私見です。)
これは19世紀の後半に印刷された本でして、今それをそのまま使うには些か古すぎます。(MTOCも俄然古いのですが。。。)
このCPGが結局のところ、幾度となく参考にされた20世紀のカッティングのオリジナルのようなものです。
無論MTOCもCPGを参考にされています。20年代に発行され、50年代まで加筆を続けMTOCは現代にある程度はフィットしています。(オリジナルではなく、現代のリプリントされたペーパーバックのMTOCもあるんですが、加筆無しの初版のコピーだったと思います。このリプリント版ももう廃盤のはずです。)
そもそもこのCPGを書いたW.D.F.VincentさんはT&Cでも編集長(?、もしくはアカデミーの偉い人??)だったわけでして、19世紀前半〜20世紀前半のT&C
はヴィンセント期というやっぱり特別な時期であったりします。1928年のT&Cにはもうヴィンセントさんは亡くなりになられていまして、MTOCも同様です。

まあ、というわけでして、"カッティング・サイエンスの父"と言われるのがこのヴィンセントさんなんですけども、その後のT&CやMOTCにもただいな影響を残していまして、、、、
そろそろ、止めないと怒られそうですね。
今度本については話すと言っているのですから、次に回したいのですが、ある程度皆様に今から紹介するのが、そういった文献であるということをご理解いただいた上で見ていただきたいというわけです。

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こんなふうに見てもよくわからないと思いますから。大きい所に注目してもらいましょう。
文章中に<DIAGRAM >とその数字がありまして、その上にそのタイトルがあります。その下はカッティングのインストラクションです。
大きなパターンの線画の下にDIAGRAM+数字がありますので、そこがリンクしております。

今回はもちろん、オーヴァーコートを抜粋してります。
細かいテクニカルなことは置いておきまして、その名前とパターンを少し見ていただければ十分です。

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DIAGRAM1
"D.B CLOSE FITTING CHESTERFIELD"
DIAGRAM2
"S.B SEMI FITTING CHESTERFIELD"
DIAGRAM3
"S.B SAC CHESTERFIELD"
DIAGRAM4
"SEMI SAC CHESTERFIELD"
DIAGRAM5
"S.B RAGLAN OVERCOAT"
DIAGRAM7
"SPLIT SLEEVE CHESTERFIELD"
DIAGRAM8
"D.B SAC OVERCOAT"

というような具合に書かれてあるのがわかると思います。
"〇〇で☓☓なオーヴァーコート"と意外と説明口調になっているのがわかると思います。
見ても解ると思いますが、チェスターならこう! オーヴァーコートならこう!
なんてかたくるしいものでは無いのが理解できると思います。

ちょこっと、言葉を解説いたしますと、Close Fitting というのはタイトめな感じです。
ダーツも他のものよりも少し大きめに取られてあります。
Semi Fitting というのはClose Fittingよりも若干ゆとりを取ったフィッティングです。

それではこのSACというのはなんでしょうか?
ダイアグラムを見れば、ダーツを取っていない所謂 "Aライン"が強調された、(本当は"Aライン"という言葉をこういった紳士服に使うのは気がひけるのですが、私は言葉のプロではないのでその辺はあやふやにやっていきたいと思います。ファッションをやっていればどんな人でもAライン=50年代のクリスチャンディオールのドレス、以外のなにものでも無いわけですから。)
とりわけ、"袋をバサッとかぶったようなフィッティング"という感じから"SAC"(SACKも同義) と使われ始めたようです。
無論シェイプもフィッティングもなくバサッとした感じで着ます。

"サックコート"、または"サックジャケット"なんて言葉を耳にすることもあると思いますが、それも同様です。
19世紀の半ばのフランスが発祥とされるサックコートは上のコート同様にダーツも無ければ、物によってはセンターバックシームもない簡素なものでした。(当時のバックパネルは4ピースが主流ですから2ピースでも随分簡素です。)
無論こういった物が好まれたのは労働者階級でして、動きやすい上着が逆に上の階級の衣服にも徐々に影響を与えていったわけですね。
何も上流階級のエレガンスだけがカッコイイ物の指標ではないのです。
労働者階級のリアルなスタイル、シャビーでシックがカッコイイ事もまた真理です。
ちなみに英語では"Shabby Chic" (シャビーシーク)と呼ばれます。簡単に言えば、使い込まれたボロボロの洋服でもカッコよく着こなすことを言います。("Chic"はシックとは発音しません、フランス語同様に"シーク"と発音します。)

まぁ、このシャビーシークは上のオーヴァーコートとは何の関係もないのですけどね。